ALL YOU NEED IS KPOP!

【DREAMCATCHER】悪夢が来りて笛を吹く【PIRI】

覚醒した真の悪夢

そして

終わりの始まり

ということで2月13日、4th.EP「The End of Nightmare」(タイトル曲「PIRI」)でDREAMCATCHERがカムバ。

そして前作まで続いた“悪夢の物語”はこれにて終結を迎えました。

※DREAMCATCHERってどんなグループ?これまでどんな物語だったの?という方がいらっしゃいましたら以下の記事を参考にしていただけたら幸いです。
【DREAMCATCHER】悪夢の裏側【まもなく日本デビュー記念】
【DREAMCATCHER】新たなる悪夢との対峙【What】

えぇ、いきなりですが、一応「InSomnia(インソムニア/ファンの名称)」の端くれを自負している私は、実のところタイトル曲よりもEPに収録されている楽曲の方が好きでして。
というのも、これまでのタイトル曲群は、よく言えば分かりやすい、悪く言えば「メタルって言ったらこれでしょ?」というテンプレ的なメタルサウンドだからであります。
「そこが本筋だろ!」と突っ込まれそうですが、ドゥケ(DREAMCATCHERの愛称)を好きになったのはダミがカッコ良かったからで、楽曲は二の次的な感じだったのです。というか初めて聴いた時は「むむ、これはまぁまぁダサいぞ」くらいにも思っていました。それがタイトル曲以外の「Sleep-walking」や「어느 별 (Which a Star)」を聴いてめちゃくちゃ気に入り、今やすっかりという訳です。とはいえ、それでもドゥケを人に勧める場合は「タイトル曲以外も聴いてみて」と言っていたのです。

しかし、もうその必要はなくなりました。

2月11日に公開された「HIGHLIGHT MEDLEY」を観た時から、「PIRI、過去一の匂いがプンプンするぞ」と思っていたのですが、その予感はドンピシャ、いや、それ以上にちょっと鳥肌立ちました。

今回のEP全てのプロデュースと作詞・作曲を担当しているのはOllounderとLEEZなのですが、この組み合わせはこれまでのドゥケの楽曲の半数近くを手がけています。
そんな彼らが担当したタイトル曲は2nd.EP「悪夢・Escape the ERA」の「YOU AND I」のみで、全編通して携わるのも初です。
そのOllounderとLEEZはなんと、前記した「Sleep-walking」「어느 별 (Which a Star)」をはじめ、私の好きな楽曲を軒並み手がけてもいるのです。

その組み合わせで作られた「PIRI」ですから、最高に決まっています。

ベタなチョーキングなし、テクに酔いしれてイキったソロや早弾きもなし。ギターはリフでゴリゴリ押しまくり、サビではハードなドラミングにシンセ音で構成されたメロディが重なる。そしてタイトルでもある「PIRI(피리=笛)」。ピッコロ(フルートの派生楽器)のような木管楽器が怪しげで不穏な音色を奏でながらも、そこには妖艶な美しさすらあります。

楽曲構成においてもサブボーカルであるガヒョンがラップを披露し、メインラッパーであるダミのパートもなんと3回。特に同じ歌詞で2度繰り返されるダミのパートは一聴して韓国語には聞こえず、「祈祷師の呪文か!?」と思うほど、摩訶不思議で強烈なインパクトを残しています。

カッコいい。

これはもうメタルではありません。ポスト・ハードコア、いや、この重厚で硬派な音こそがアップデートされた

DREAMCATCHERサウンド」。

私はそう思います。

目醒めたのです。ドゥケが。

確立されたのです。真の悪夢の音色が。

 

そしてMVです。

1作目「Chase Me」、2作目「Good Night」では悪夢を可視化し、

3〜5作目の「Fly High」「You and I」「WHAT」ではユヒョンを中心人物として描かれていた“悪夢”ですが、

今作でメインとなるのは全員です。

私は前作の「WHAT」における悪夢とは「様々な不安や孤独、軋轢などに晒されること。つまり現代に生きるということそのもの」であり、対外的な要素で引き起こされる闇なのだと解釈しました。

しかし「PIRI」で描かれているのは、「自己という内面」ではないかと思います。

そもそも「夢を見る」とはどういう事でしょうか。

さる精神分析医の言葉を借りれば

「昼の名残と無意識の領域から出てくるものとが一つになって、夢を形成する」

とあります。「昼の名残」とは“意識的生活から出てくるもの”で、その日に見たものや体験した事と言い換えられます。

夢はしばしば「その日見たものの記憶を整理している」とも言われます。しかしそれだけが作用する訳ではなく、そこに過去の体験や記憶という無意識の領域が入り込み、夢を形作ります。

では悪夢とは?

それはおそらく自己の内面に抱える悩みや恐れが、これまでに経験・体験していた事と一つになったものではないでしょうか。



物語は真っ白な部屋で角笛を見つけるユヒョンから始まります。そこで何かに気づいた彼女は部屋から走り去ってしまいます。


シヨンは細工の施された壁のある廊下を彷徨いますが、とある部屋から彼女を招き入れるように差し出された手に怯えます。


ハンドンは壁一面に掛かった時計のある部屋に足を踏み入れ、その中の一つを床に投げつけます。


ガヒョンはハンドンと同じように壁一面電話で埋め尽くされた部屋にいます。その一つが鳴り受話器を取ると、何事かを告げられ、次の瞬間、何者かに口を抑えられ連れ去られてしまいます。


人気のない薄暗い部屋で点いているテレビを覗き込むジユ。そこで目にしたのは2人の自分でした。


スアが迷い込んだのは古びたフランス人形で踏め尽くされた部屋でしたが、その人形が生き物のように顔を彼女の方に向けます。驚いたスアはその場から逃げ出します。


ダミはシヨンがいた廊下を彷徨いますが、突き当たりに扉を見つけます。するとその扉が開き、ダミを中へ引きずり込んでしまいます。

ここまでのシーンで注目したいのは、ユヒョンからダミまで、1人が画面から去ると、次のメンバーが連動しているように登場するという事です。ダンスパート以外で、2人以上のメンバーが1つのシーンに映る事がないのです。これはつまり7人が1人の人物である事を示唆しています。

その後のシーンでは


不安定に立てかけられた梯子に座るシヨンや


真っ暗な部屋でほのかに射す光を見つめているガヒョン、


鏡に対峙するスアなどが映し出されます。

前半から中盤における7人それぞれのシーンは、「悪夢の発生元となる、自己の内面に潜む不安や恐怖」ではないかと考えられます。そしてシヨンやガヒョン、スアのシーンは、その内面と向き合った姿なのだと思います。


このユヒョンのカットは、それを最も象徴しているように思います。

gifs website

ユヒョンは様々なメンバーの姿に変わり、またユヒョンに戻ります。

これにより7人が1人の少女だったという事実が示されます。そしてその少女とは、彼女たちを観ている我々のことでもあります。

“悪夢”とは、“自己の内面が生み出すもの”。

ではそれを消し去る為には、結局のところ自ら立ち向かうしかないのか?

最後のカットは7人が手を繋いで、我々の方に力強い視線を向けています。

共に歩もう。

ここにはそんなメッセージが込められているように思います。

彼女たちはサウンド面で大きく飛躍し、悪夢にも一つの答えを見出し、一連の物語は終わりを迎えました。

しかし…

イギリスの詩人、T・S・エリオットはこう記しています。

What we call the beginning is often the end.
And to make an end is to make a beginning.
The end is where we start from.

始まりと呼ばれるものは、
しばしば終末であり、
終止符を打つということは、
新たな始まりである。
終着点は、出発点である。

覚醒したドゥケの物語は、ここから始まるのです。

笛の音を合図として。

最新情報をチェックしよう!