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【RM (BTS) 】“愛”と“憎”の肯定で見えること【seoul prod. HONNE】

私は最近、家にいる時はApple Musicにあるサービス「Radio」で延々とKポップを流しています。これは新旧問わず様々な楽曲が流れるのですが、何かしていても“それ”が流れるたびに手を止めて耳を澄ましてしまう曲があります。それがBTSのRMが歌う「Seoul prod. HONNE」です。

RMは言わずと知れた世界的アイドルグループ、BTS(防弾少年団)のリーダーであり、ラッパーです。

これはそのRMがソロとしてリリースした2作目のミックステープ「mono.」のタイトル曲の1つ(もう1曲は「tokyo」)で、彼の生まれ育った街である「ソウル」(ソウル特別市 銅雀区 上道洞出身)を題材としている楽曲です。ちなみに以下の画像を見て頂くとわかりますが、実際には“ミックステープ”ではなく“プレイリスト”になっています。

これは想像ですが、“ミックステープ”はヒップホップアーティストが作品をリリースするタイトルに付ける場合が多く、それを一般ユーザーに耳馴染みのある“プレイリスト”にしたのは、ファンに向けて、大衆に向けて、自分は“アイドルなのだ”という意思表明だったのかもしれません。

楽曲自体はMVが公開された時に観ていたので知っていましたが、自発的に見聴きするのではなく、ふと飛び込んでくる静かで美しいあのメロディを耳にすると、なんとも言えない心持ちになるのです。酔いしれる訳でもなければ、寂しさや不安に狩られる訳でもない。ただ何か心のどこかに触れるような感覚。それが何かわからないまま何度か同じように耳にしているうちに、繰り返し出てくる「I love you Seoul」「I hate you Seoul」という歌詞が、ある風景を想起させるに至りました。

それはもう離れて20年近くになる私の地元、東京都足立区です。
一口に足立区と言っても、元区民からすればそこは大きく2つに分ける事が出来ます。東西に走る荒川を境とした北側と南側です。後者は複数の路線が乗り入れる北千住駅があり、いわゆる“下町情緒のある足立区”とはこちらの事です。駅にはデパートや劇場が隣接し、周りには商店街や数多くの飲食店が立ち並び、大変賑やかです。
しかし私の生まれ育った場所はそちらではなく、埼玉県寄りの北側。当時はほとんど何もない場所と言っても大げさではなく、「足立区=治安が悪い」というイメージは主にこちら側の事です。とはいえ、私が暮らしていた20年前でも大げさに噂されるような危険な状況はほとんどなく(一応“ゼロではなかった”とは言っておきます)、今でも地元に暮らす友人によれば、それでも「随分変わった」ようです。もちろん良い意味で。

随分前に撮った荒川土手での1枚。
南側にはビルが多く立ち並びますが、北側はそういった建物が少ないので空が高く感じます。

一言で言えば、私は地元が嫌いです。
くぐもったような街並みと、そこに立ち並ぶ家々、街行く人々の格好、工場の音、シャッターの閉まった商店街、古紙や鉄の匂いといったほとんど全てに嫌気がさしていました。
シネコンを併設した商業施設を建てても、立派なのは外見ばかりで、中にいる人々は変わらない。いくら取り繕おうとしても、そこに根付いた精神性は依然として同じで、それはまるで変化を恐れているようにすら思え、街全体が思考する事を放棄してしまったような空虚な雰囲気を纏っていたからです。

一方で、冗談という範囲を越えて「足立区ってさ」と知ったような口を聞かれるとちょっとした反論をしてしまう自分がいたのも確かで、愛憎が1:9というような割合で長らく過ごしてきました。けれどもその1:9の“1”も「思い返すのもゾッとするし、足を踏み入れるのも嫌だ」というほどではなかっただけで、それが果たして“憎”と対になる“愛”なのかと考えれば頭を捻ってしまいますし、反論してしまうのも、友達でもない大して知らない人間に言いたい放題にされる事が“癪に触ったから”というだけだったのかもしれません。更には当時周りの友人に「地元が嫌い」と公言して憚らなかった事も、その考えをより強固にしていたようにも思います。

しかし最近ふと気づいたのは、当時ほど地元に対しての嫌悪感が濃くないという事です。
生まれ育ったのは事実ですし、あの環境が自分の人格形成や価値観を方向づけ、それが積み重なって今の自分がいるんだと思えるようになったからです。それはこれまで経験してきた数々の気が滅入るような事があった中で、ようやく今現在の自分を肯定出来るようになってきたからに他なりません。おそらく、というかほぼ間違いなく私は今よりも遥かにずっと自分自身が嫌いで、そんな自分がしてきた選択を認めたくなかったんだと思います。けれども結局これまでの時間は今に繋がっている訳で、だとすればこの状況にいる自分は結果オーライだと偽りなく自らに言う事が出来ます。

「I love you Seoul」「I hate you Seoul」という歌詞は“愛”と“憎”が常に背中合わせにある自己、そして他者への寛容と肯定、“過去”と“現在”を繋ぐものであり、「I’m leaving you」とはそれを持って未来へと進む事なのではないでしょうか。
私はこれまで何度も間違った選択をしてきたように思います。いや、そう思っていました。
けれどもいつか誰かがこんな事を言っていました。「人が人たる所以は、考え、過去を振り返り、そこから学べるという事だ」と。またある人は言っていました。「最大の復讐は、赦す事である」と。私は長らくその言葉が他者へ向けたものだと思っていましたが、今になってそれは自分の事も含められているのだと気づくに至りました。
“愛”と“憎”の肯定から見えること。
RMはそんなメッセージをこの曲に込めたのかもしれません。

昨日の私は何か間違いを犯したかもしれませんが、そんな昨日の私も、私であることに変わりはありません。今日の私は、そうした過去の欠点や誤りをすべて含め、私です。明日は、ほんの少しだけ賢くなっているかもしれませんが、それも私です。これらの欠点や失敗は、私自身であり、私の人生という星座を彩る、輝く星たちを作ってきたのです。私はいまようやく、過去の自分やこれからなりたい未来の自分、ありのままの自分を愛することができるようになりました。

RM:UNICEFスピーチより

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