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【ソンミ】黒より深い矛盾の闇【Noir】

We are in Noir

3月4日、ソンミ(SUNMI/선미)が3rdシングル「누아르(Noir)」でカムバックを果たしました。

本作は2年に渡って完結した3部作「Gashina(가시나)」「Heroine(주인공)」「Siren(사이렌)」に続く新曲になります。タイトルである「Noir(ノワール/누아르:ヌアル)」とはフランス語で“黒”や“暗黒”の意味です。内容としてはSNS中毒を揶揄したもので、他者の関心を集めようとするあまり過激な表現に没頭していく病的な心理を“現代の闇”として表現しました。

作詞・作曲はソンミ自身が手がけており、パートナーとして元HISTORYのEL CAPITXN(本名:장이정/チャン・イジョン)が作曲に参加しています。楽曲は浮遊感のあるシンセサイザーとディスコドラム、808系(日本では“やおや”として知られているRolandが1980年に発売したTR-808というリズムマシンが由来の低音の総称)ベースが調和したエレクトロニックなレトロ・ダンス曲となっています。緊張感のあるリフレーンに様々なアナログサウンドが追加され、ソンミの歌詞(感情)の変化に合わせ曲の表情が変化する作りとなっています。曲全体としてはダークなイメージの構成となっており、前述した3部作の雰囲気を踏襲した内容となっています。

MVでソンミは「attention seeker(アテンション・シーカー:目立ちたがり屋、かまってちゃん)」を演じており、SNSの闇に没落していく度合いが3段階で描かれています。

ソンミがハートを口にするところから始まります。これはSNSの「いいね!」「Like」ボタンを象徴しており、SNSでの承認欲求の始まりを意味しています。たった一人で誕生日ケーキと対峙しているソンミは燃え盛るケーキを背景にライブ放送を開始します。そして一人の視聴者から一つのハートを獲得したことで孤独から解放され、SNSの快楽が芽生えます。前半部分では公開される動画や画像の表面と、背景や実情を裏側としてSNSの2面性を描いています。miyayeahはソンミが実際に使用しているSNSでのアカウント名です。

艶やかに写る花は、実はトイレの芳香剤代わりの花であり、撮影後にくしゃみをしていることからアレルギーを抱えて無理して撮影していたことがわかります。そしてハートが少し増えています。

ソンミは自分が少し無理をすればハートが多くもらえることに気づいてしまいます。ピルケースから溢れ出す色とりどりのハートは、その中毒性を表しています。ソンミはここで「보지 않아도 알잖아(見なくても分かるでしょ) Bad ending」と歌っています。自分が不幸になるのが分かっていても辞められない状態になっているということです。

ヒマラヤで撮られたはずの画像はただの壁紙であり、繋いだ手は自撮り棒でした。

モルジブの砂浜は自室で作られた箱庭でした。そしてハートが増えていきます。正直ここまでするなら、裏側見せた方がハートを稼げてしまうような気もしますが…

再びのライブ放送では視聴者数が50近くまで増えていきます。不幸を見せることでより多くのハートが稼げることにソンミは気づいてしまいます。

自身の頭を撃ち抜く過激な表現で視聴者数はついに2000人を超えます。コメントしている一番下にlumpenssとありますが、これはMV制作を担当しているLUMPENSの遊び心かと思います。

ソンミは不幸と過激、すなわち悲劇を演出することで多くの視聴者とハートを手に入れますが、同時にDISLIKE(嫌悪、反感)、unfollow(フォロー外し)というアンチを稼ぎ、多くの傷を負います。そのことで視聴者やハートなどの数字を獲得することから、より悲劇的な表現をすることに欲求が変化していきます。つまり反対派の意見には耳を貸さず、ただ注目を浴びるということに傾倒し始めるのが次の段階にあたります。再びここで「보지 않아도 알잖아(見なくても分かるでしょ) Bad ending」の歌詞が登場します。

針のむしろに飛び込んだり、倒れてくる巨大サボテンの前で待ち構えたり、扇風機に髪の毛を巻き込ませてみたりと、過去の投稿を上回らなければならない強迫観念に駆られているソンミは、より悲劇的な表現を求めます。

ソンミのこの投稿は視聴者数もハートもありませんが、これは「ストーリーズ(24時間で自動で削除される一時的な投稿方法)」といわれるもので、悲劇を披露するということの欲求がより日常的になっていることを表しています。

上から「#선미(ソンミ)」「#소통해요(ソトンヘヨ:仲良くしよう(相互フォローの意))」「#공감(ゴンガン:共感)」「#사랑해(サランへ:愛してる)」となっています。「#(ハッシュタグ)」が付くことで、その言葉が持つ人間性や温もりなどが失われている様子が物悲しく表現されています。

ソンミはSNSという闇に完全に支配されてしまった人として最終段階に突入します。服はSNSで見せるためのものになり、指を切り落としたり、メイクがめちゃくちゃになっていったりと、モラルや美の基準が失われていきます。

最後は2014年に世界中で大流行した「アイス・バケツ・チャレンジ(氷水を頭から被ることで筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の認知や寄付を促す運動)」への皮肉が描かれます。韓国では病院設立を目的として2018年の5月から6月末まで再ブームが起きており、最近のSNSでの大きな動きの一つでもあります。ソンミ自身も最初のブームである2014年の8月21日に参加した記録が残っているのですが、動画や画像を発見することはできませんでした。この運動は世界中で大流行した当時から様々な議論を読んでおり、反対派の意見としては「社会貢献ごっこ」に過ぎないと、ALS 治療への貢献にはつながっていないとの意見が多く見られます。しかしながらソンミのようなセレブリティにとって、この運動の指名を受けるということは社会的な脅迫に近く、同調圧力の強い韓国において反対の姿勢をとることは、かなりのリスクが伴います。MVの中のソンミは電線を片手に持つことで「アイス・バケツ・チャレンジ」が過激さを示す道具に成り下がっていることを揶揄しています。

ラストシーンは様々な解釈できるのですが、前述の「アイス・バケツ・チャレンジ」の揶揄から考えると、SNSの闇に傾倒していくことは、そのセレブリティ個人の資質だけでなく、それを支えるファンや大衆にも責任があると示唆しているのではないかと考えられます。そのことからこのシーンはより過激なものを求めるソンミを見たファンが、悲劇のプレゼントとして車の破壊(炎上)を画策したものだと解釈できます。そして彼女はそれを受け入れる人になっています。

We are in noir 이제 그만 놔(もうやめて) Noir Noir

ソンミはサビでSNSの闇に囚われた人々をWe(私たち)として、現代社会に警鐘を鳴らしています。

ソンミはビルボード・コリアのインタビューで「ノワール(noir)はフランス語で“黒”、“憂鬱”、“不吉”などの意味を持っているが、現在の私たちの社会のノワールは何だろうかと疑問に思ったが、「いいね」や「SUBSCRIBE(登録・フォロー)」などを取得するために危険な場所でセルフィーや動画などを撮って死ぬ人が毎年増えている事実を知って、それが今、私たちが生きていく時代のノワールではないかという考えから歌を書くことになった」と答えています。


しかしながら、ソンミはこの曲のリリースに際し、いくつか矛盾というか不可解な点を抱えています。

「누아르(Noir)」リリースの数日前である2月19日、ソンミは自身のインスタグラムにAdvilという鎮痛剤の写真を投稿します。

その後、2月21日に行われたV LIVEにて「練習終わって来ました」とファンに24日から始まるワールドツアーへ向けて準備している旨を報告していたのですが…

コンサートや振付について話していたソンミは突如泣き出してしまいます(36:00~)。前日の錠剤の写真も相まって精神的に追い込まれているのではないかとファンからは心配の声が多く上がりました。

事態を重く見たのかソンミは直後に自身のTwitterで釈明をします。

「心配しないでください、本当に! 本当に大丈夫です。本当に。心配させてごめんなさい。泣かないで」

そして所属事務所であるMake Usも公式コメントで錠剤の画像を投稿したことと涙を流した理由を発表します。

【Make Usエンターテインメント 公式コメント全文】
こんにちは。Make Usエンターテインメントです。歌手ソンミについて、公式コメント伝えます。現在、ソンミの個人SNSにアップロードされている錠剤について、撮影現場の小物であることが確認されました。「V LIVE」の場合、ファンとのコミュニケーション途中、感情の流れによって起きたことで、特別な理由がないことをお知らせします。ソンミへの大きな愛と関心にいつも感謝しております。これからもたくさんの応援お願い致します。ありがとうございます。

Make Usのコメントからはまるで誠意というか温もりを感じませんが、ここで重要なのは、真実がどうであったかという点ではありません。

ソンミが否定していた振る舞いをソンミ自身が行なっていたということです。時系列が逆ということもありますが、そのことについての言及は未だされていません。

ソンミもファンも、そのことから目を背け続けるのであれば、それこそが本当の闇と言えるのではないでしょうか。

 

まぁプロモーションの一環だとしたら、天晴れって感じですけどねw

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