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【RUANN】才能の輸出、危機感の輸入【BEEP BEEP】

7月31日、RUANNが日本人アーティストとして初の日韓同時リリース、そしてKポップでのデビューを果たしました。

RUANN
(ルアン)
大山琉杏
2003年7月21日(16歳)
大阪府
レーベル:SPOTLIGHT
事務所:B.SIDE INC.
HP/Twitter/Instagram/YouTube

RUANNはTOY’S FACTORY(トイズファクトリー)から2018年9月10日にデジタルシングル「LOVE&HOPE」でメジャー・デビューしたシンガーソングライターです。

2018年11月9日には2ndデジタルシングル「There’s No Ending」をリリースし、こちらはアニメ「ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション」の主題歌に起用されました。2018年12月12日に3rdデジタルシングル「READY TO GO」をリリースし、こちらはCygamesコーポレートCMソングに起用されました。

一見順調そうなアーティスト活動に見えますが、2019年3月15日に突如TOY’S FACTORYから活動休止が告げられ、6月19日には本人からTOY’S FACTORYとの契約終了が告知されました。

そして7月31日の日韓同時リリースの「BEEP BEEP」へと至ります。

韓国でのデビューシングルとなった「BEEP BEEP」には、外国人の新人に対しては、あまりにも豪華な大御所の面々が集いました。

プロデューサーにはTWICEの初期三部作「Like OOH-AHH」「CHEER UP」「TT」などを手掛けたチェ・ギュソンとラドの二人からなる著名作曲家コンビであるブラック・アイド・ピルスン(Black Eyed Pilseung)。最近ではTWICE「FANCY」、Apink「%%(응응/うんうん)」チョンハ「벌써 12시/Gotta Go」などを手がけています。

振り付けにはTWICE「TT」やソンミ「Gashina」など、多くのダンスアイコンを作ってきたソウル(江南)にある人気ダンススタジオ「1MILLION DANCE STUDIO」のチーフ振り付け師でもあるLia Kim(リア・キム)。コラボダンス動画ももちろん公開されています。

MVにはWanna One「약속해요 (I.P.U.)」、IZ *ONE「비올레타(Violeta)」、TXT「별의 낮잠 (Nap of a star)」などで知られる、当ブログでも最も登場回数の多い映像制作集団のDIGIPEDI

と、Kポップファンであれば、1度は耳にしたであろう面々です。

なぜ、日本でデジタルシングルを3つリリースしただけの、超売れっ子でもないRUANNがここまでのクリエイターを揃えられるのか?という疑問にぶち当たるかと思います。

それはRUANNのメジャーデビュー以前、つまりインディーズ時代を含めて彼女がどういう経緯で世に出てきたかということが関係しています。

2003年7月に大阪で生まれたRUANNはマイケル・ジャクソン、ビヨンセ、テイラー・スイフトなどアメリカのトップアーティストに影響を受け、幼少期より音楽に興味を持つようになります。7歳頃より本格的に歌やダンスをはじめ、YouTubeなどに洋楽のカバー動画をアップするようになります。

そのことが話題になり、歌うまキッズとして2013年12月、2014年3月(当時9歳)テレビ朝日「関ジャニの仕分け∞」や2015年8月、2016年1月(当時12歳)テレビ朝日「musicるTV」などに出演し、徐々にメディアへの露出が増えていきます。

2015年10月(当時12歳)、ゆずの北川悠仁が楽曲提供するスーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』で主題歌のソロボーカルとして抜擢されます。

アーティストとしての自覚が芽生え始めたのか、その頃からレッスンなどの指導を受ける立場から離れ、独学でアコースティック・ギターやピアノを練習し始め、SNSなどへの動画投稿を再開します。大阪の大東楽器で様々な楽器に触れ合う機会をもらい、現在ではギター、ピアノ以外にも、ドラム、ヴァイオリン、ボイスパーカッション、ウクレレ、ハーモニカ、ループステーションなどのレパートリーがあります。英語・韓国語・中国語なども独学で勉強し、韓国語などは1日12時間くらいの勉強を3ヵ月ほど続けたら、韓国語が話せるようになったそうです。

2016年の3月から4月にかけて、小学校卒業後の春休みにニューヨークでの路上パフォーマンスを行い、CNNなどの番組プロモーションビデオへの出演などを果たします。ちなみにこのストリートライブなどで得たチップは熊本震災の復興支援として募金したそうです。

2017年2月には、音楽活動を本格化するため家族とともに大阪から東京へ移り住みます。

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She's so talented! #大山琉杏

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そして3月、RUANNにとって最も大きなターニングポイントの一つとして、YouTubeにファンがアップしていた動画を観たONE OK ROCKのTakaが、自身のInstagramにキャプチャー画像と「She’s so talented!(彼女はとても才能がある!)」と投稿しました。

Takaはそれだけに留まらず、投稿から1ヶ月後に開催されたツアー・コンサートへRUANNをゲストパフォーマーとして招待するという、粋な計らいを見せます。

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大山琉杏

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若者のカリスマバンドであるONE OK ROCKのTakaのお墨付きをもらったことで、メディアへの露出には拍車がかかり2017年7月14日、ファーストアルバム「Spice 13 Acoustic EP」をデジタル配信にてリリースします。

2017年10月には初となる国内ワンマンライブを行い、アーティスト名を大山琉杏/ルアンからRUANNに改名します。2018年1月10日にはデジタルシングル「GET THE GLORY」をリリースします。こちらは格闘家の那須川天心が出演したことでも話題になったCygamesのCMソングとして起用されました。

2018年1月17日には「I AM STANDING」をリリースし、こちらはアニメ「3月のライオン」のエンディング曲として起用されました。

2018年3月6日には初のフィジカル(音盤)である5曲入りアルバム『SCRAMBLE 14』を自主レーベル「SHIMOKI RUANTA」よりリリースします。こちらはデジタルでの配信はありません。

こうして、ゆずとTakaに見出された、マルチリンガルで、多彩な音楽的才能を持つ、若干15歳のスーパーガールは鳴り物入りで、メジャーデビューを果たすことになるのです。Kポップでのデビューに際し、これだけの豪華な陣容を揃えられたのも、これら過去の実績によるものであることは明らかです。

しかしながら、RUANNは僅か3曲デジタルシングルをリリースしただけで、Jポップの世界から身を引いてしまいます。これは個人的な見解も含まれますが、日本でメジャー・アーティストとして活動していた時期を、RUANN自身は低迷期だと捉えていたのではないかと思います。

RUANNは過去のインタビューなどで自身の夢について

「グラミー賞を獲り、スーパーボウルで歌うこと」

と、度々語っています。それはRUANNが幼少期に憧れた世界的なトップアーティストと同じステージに立つということでもあります。

ガラパゴス化したJポップは、そこから遥か遠く、世界を席巻しているKポップは、そこに遥かに近しい音楽シーンだと言うことでしょう。

アコースティック・ギターをかき鳴らし、一人でステージに立っていた頃からの大山琉杏ファンからすると、楽器も持たず踊りまくるRUANNの姿には違和感を覚えるかもしれません。しかしEDMやヒップホップのトラックが全盛のKポップにおいて、それは致し方のない変化なのです。むしろそれを清々しくこなして観せてしまうRUANNの才覚にこそ、再度惚れるべきなのではないでしょうか。

ただ、まぁその古参ファンの意見も分からなくはないというところで、“大山琉杏×Kポップ”の私的お気に入り動画を貼っておきます。

勘違いしないでもらいたいのは、現在16歳のRUANNにとってKポップへの殴り込みは、彼女のアーティストとしての道程の1ページに過ぎないということです。

勉強熱心で吸収力抜群のRUANNは、様々なエンターテイメントを取り入れて最強のポップアーティストへの進化を目指しているのではないかと思います。おそらくKポップでは叶いませんが、本場アメリカのミュージックシーンには、彼女の好きなエド・シーランのようにアコギをかき鳴らすアーティストが健在です。同じく、彼女の好きなテイラー・スイフトも元々はカントリー歌手でしたが、軽快なダンスナンバーである「Shake It Off」で世界的なムーブメントを起こし、新世代のポップアイコンになりました。彼女の見据えるミュージシャンとしての完成形は、全くぶれていないように思えます。

残念なのは日本の宝であったはずのRUANNが、Jポップという音楽シーンを夢を叶えるには狭すぎると感じてしまったこと、そして聡明なRUANNの考えるそれが的を得ているということです。同時リリースされた日本語曲も「Japanese ver.」となっており、韓国版の方にはKorean ver.という表記はありません。これはどちらが原曲であるかということを表しています。再生回数は韓国版の1theKでの配信を合算すると、おおよそ16万再生で、日本版は7万再生です。(2019年8月12日現在)

少々乱暴な言い方になってしまいますが、日本の音楽が世界から遅れているという事実を、日本の若い才能の流出によって突きつけられてしまったのです。

現在は輸出規制などを発端に、日韓関係が近年稀に見るぐらい悪い状況になっています。その最中にデビューしてしまったことは不運だとしか言いいようがありませんが、Kポップを筆頭に文化的交流は相変わらず続いています。

今回のRUANNの日韓同時リリースは、Jポップにおける危機的状況に警鐘を鳴らすものと言えるでしょう。


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