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【韓ドラ未経験者が観た】愛の不時着は本当に面白いのか!?【ネタバレなし】

2020年上半期、おそらく日本で最も話題となった一つであろう大ヒット韓国ドラマ「愛の不時着」。

TwitterなどのSNSをはじめ、いまだに各ニュースサイトでその名前を目にするほどです。

一方で「Kポップは好きだけど、韓国ドラマはちょっと…」という層も確実に存在します。かくいう私もその1人で、Kポップはもちろんのこと、韓国映画は昔から好きだったけれど、韓国ドラマは未経験。厳密に言えば友人に勧められて「応答せよ1997」と「トッケビ」に手を出してみたものの、数話でストップしている状態でした。だって長いんだもん。

しかし流石に方々で「愛の不時着愛の不時着愛の不時着」と耳にしていたもので「本当だな?本当にそんなに面白いんだな?よーし、じゃあいっちょ観てやろうじゃないか」とやや上から目線で重い重い腰を上げ、ついにNetflixに登録して観始めたのであります。

先に結果を申し上げましょう。

ふざけんなよ、もう。

ボロッボロ泣いた。

泣きまくったさ。

そして笑ったさ。

つまりですね、「愛の不時着」って本当に、本当に面白いんでやんの。

どうやらこのドラマには様々な過去の韓国ドラマオマージュがふんだんに盛り込まれていたり、韓国語と北朝鮮の言葉の違いなども面白さの一つということですが、ご安心ください。それらを知らなくてもじゅーぶん楽しめます。

という事で、今さらながらこのドラマの見どころをネタバレなしで解説させて頂きたいと思います。

一応私は韓国ドラマ未経験でしたが、手前味噌ながら映画に関しては30年以上に渡りそこそこの数を観てきた(年平均100〜150本)ので、映像作品に対してのリテラシーはある程度持ち合わせているつもりです。ちなみに好きな映画監督はリチャード・リンクレイター、ジェイソン・ライトマン、デヴィッド・フィンチャー、クリストファー・ノーランなどなど。

そんな映画好き(って自分で言うの恥ずかしいけど)が送る「愛の不時着」ネタバレなし解説をどうぞ。

作品概要

愛の不時着
(사랑의 불시착/Crash Landing on You)
放送時間:毎週土・日/21時10分〜22時40分
2019年12月14日〜2020年2月16日
全16話
チャンネル:tvN
配信:Netflix(2020年2月〜)
演出:イ・ジョンヒョ/キム・ヒウォン/キム・ナヨン
脚本:パク・ジウン
出演:ヒョンビン/ソン・イェジン/ソ・ジヘ/キム・ジョンヒョン他
HPInstagram(tvN)Twitter(tvN)
facebook(tvN)YouTube

ティーザー

あらすじ

韓国の財閥・クイーンズグループの末娘であり、自らもファッションブランド「セリズチョイス」の社長を務めるユン・セリ(ソン・イェジン)は、スポーツアパレルの新製品テストのため自らパラグライダーで飛行するが竜巻に巻き込まれてしまう。
運よく木に引っかかった事で大事には至らなかったが、たどり着いた場所はなんと北朝鮮だった。そこで偶然にも出会った厳格な北朝鮮人民軍の中隊長、リ・ジョンヒョク(ヒョンビン)やその部下たちの手を借り、どうにか韓国へと戻ろうとするセリだったが…

登場人物

魅力的で深みのある主人公
ユン・セリ(演:ソン・イェジン) リ・ジョンヒョク(演:ヒョンビン)
財閥令嬢で、一見何不自由なく育ち、自身もバリバリの成功者であるセリは、成果第一主義で上昇志向も高く、社員への気遣いと言うものはほぼ皆無。ブランド品で身を固め、会社の利益のためならスキャンダルでさえも利用し、徹底して自己顕示欲を示そうとする、いわゆるお高く止まったイヤな女です。
一方のジョンヒョクは見事なまでに堅物な軍人で、セリとは正反対。ほとんど笑顔なし。融通も効かず、情と言うよりも軍人としての義務感からセリに協力するのです。
だがしかし、そんな2人に共通するのは過去に負った心の傷が現在に到るまで人生に大きな影を落としているという事です。それはそれぞれの中にある「生(せい)」、そして「愛」という感情から目を反らさざるを得ない出来事だった訳ですが、物語が進むにつれ、立場も性格も全く異なる2人は相互作用的にお互いを補い合うようになり、人生が色付き始めるのです。
その関係性の変化を時にコミカルに、時にエモーショナルに、そしてドラマチックに紡いでいくストーリーテリングは見事ですし、それぞれのキャラが持つ感情の機微を余すところなく表現した2人の演技は素晴らしいとしか言いようがありません。
もう1組の主要キャスト
ソ・ダン(演:ソ・ジヘ) ク・スンジョン(演:キム・ジョンヒョン)
平壌に居を構える最高級デパートの社長を母にもち、ジョンヒョクの婚約者でもあるダンと、イギリス国籍を持ちビジネスマンである一方、セリの兄から巨額の金を横領し詐欺行為で指名手配された為、ブローカーを介して北朝鮮に逃れてきたスンジョン。
スンジョンはかつてセリに結婚を持ちかけながら破断となっていましたが、実はその裏にはクイーンズグループとの因縁があり、ジョンヒョクの婚約者であるダンもセリが現れた事でその立場に変化が訪れるようになります。ひょんな事から知り合ったダンとスンジョンは、それぞれの思惑でセリとジョンヒョクの行く末を阻もうとしますが、実はこの両名も主人公の2人同様、心情的に似た者同士であるという事に気づいていくのです。
その立ち振る舞いから一般人であれば近づき難いオーラを放つダンと、社交的ではあるものの徹頭徹尾胡散臭くチャラいスンジョンという、まるで水と油とも言える2人ですが、これがまたね、良い関係を築いていくんですよ。
そしてスンジョンがコッチェビ(꽃제비)と呼ばれる北朝鮮のストリートチルドレンと言葉を交わすシーンがあるんですが(第15話)、彼のバックボーンが凝縮された名シーンとなっていますので、ぜひ楽しみにして欲しいと思います。
あぁ堂々の第五中隊
ピョ・チス(演:ヤン・ギョンウォン) パク・グァンボム(演:イ・シンヨン)
キム・ジュモク(演:ユ・スビン) クム・ウンドン(演:タン・ジュンサン)
第五中隊はジョンヒョクが中隊長を務める中隊の部下たちですが、彼らがいなければこのドラマの魅力は半減されていたと言っても大げさではないでしょう。口が悪く酒好きな曹長のチス、寡黙だがジョンヒョクからの信頼が最も厚いグァンボム、韓ドラ大好きでチェ・ジウがサランヘヨなジュモク、純朴でセリを姉のように慕うウンドン。もうこの4人の魅力が半端ないです。特に韓ドラを知らない人に対し「一般的な展開はこうなる」というような説明をしてくれるジュモクの存在は狂言回し的な役割も担っており、また、いつもセリに嫌味を言いながらも徐々に友情を育んでいくチスとの関係は微笑ましく、更には軍隊という家族と隔離された状態で暮らす4人と、家族関係に問題を抱えるセリの交流は一種の疑似家族の形成でもあるのです。
この4人のセリに対する献身的な態度は、幾度となく、そして最終話で確実に涙腺を決壊させるはずです。
善と悪
チョ・チョルガン(演:オ・マンソク) チョン・マンボク(演:キム・ヨンミン)
このドラマにおける完璧な悪役である保衛部人民武力部保衛局所属の少佐・チョルガンと、同じく保衛部で盗監聴室所属のマンボクですが、まぁこのチョルガンが徹底的に嫌なやつ。軍人でありながら麻薬密輸に非武装地帯での不法盗掘など犯罪行為のオンパレード。おまけに超粘着質な性格。部下であるマンボクは盗聴班という職業柄、周りからは「耳野郎」と蔑まれており、職務には忠実ながら、かつてチョルガンが主導となり不本意ながら自らも加担する事になった“とある事件”により良心の呵責に苛まれている心優しき軍人です。
チョルガンはその“とある事件”からジョンヒョクと反目する立場にありますが、あの手この手を使ってどうにかジョンヒョクを陥れようとします。そんな中、マンボクはかつてジョンヒョクの家族から受けた恩がある為、徐々に自身で抑え込んでいた“正しきこと”と向き合っていくのですが…という見事なパワハラする側・される側という立場にある2人のコントラストが非常に面白いです。と言うとちょっとマンボクには申し訳ないほど、彼の受ける扱いがドイヒーです。しかし終盤、彼の機転によりセリと家族との間で大きな変化が訪れるという重要な役まわりでもあり、第五中隊との絡みも必見なのです。あとチョルガンのクソ野郎っぷりね。ほんと、こいつはもう、とその徹底した悪役ぶりに激おこプンプン丸になる事請け合いです。
パラサイトにリスペクト
コ・ミョンウン(演:チャン・へジン) コ・ミョンソク(演:パク・ミョンフン)
ダンの母親でデパートの社長、ミョンウンと、その弟であり保衛局司憲局長で少将というなかなかお偉いさんのミョンソク。この2人はご存知の方も多いかと思いますが、あの「パラサイト 半地下の家族」で共演しており、いわば敵対関係とも言える立場から今回は家族として登場です。
ミョンウンは社会主義国にも関わらず成り金感をこれでもかというほど醸し出しており、見栄っ張りですぐマウントを取ってくるし、とにかく口やかましくてウザいオバハンなのですが、ある時に見せた娘への想いを吐露するシーンで「なんだかんだであんた立派だよ」とそれまでの感情を覆されました。
ダンにとって叔父にあたるミョンソクは終始コメディリリーフに徹し、その空気の読めなさが痛快なのですが、「パラサイト」で「リスペクト!」と叫ぶ狂人を演じた人と同じ人という事に正直驚きです。というか最初気付きませんでした。
「パラサイト」未見の方は、ぜひ今回の2人と観比べてみることをお勧めします。
最強のおばちゃん軍団
ジョンヒョクの住む舎宅があり、セリも滞在する事になる村のおばちゃんたち。主要メンバーは写真前列に写る(左から)陸軍少佐の妻ヤン・オックム(演:チャ・チョンファ)、陸軍少尉の妻であり人民班長でもあるナ・ウォルスク(演:キム・ソニョン)、陸軍大佐の妻で舎宅村の実力者マ・ヨンエ(演:キム・ジョンナン)、そしてオックムとウォルスクの間にいる白い服を着た「耳野郎」の妻ヒョン・ミョンスン(演:チャン・ソヨン)という4人。
彼女たちは劇中における北朝鮮の登場人物の中で最も平凡な市井の人たちです。そんな彼女たちは生活様式こそ異なれど、我々となんら変わらずに日々掃除・洗濯・炊事を行い、時には酒を飲んで愚痴をこぼし、子どもの成績やなかなか昇進出来ない夫の現状に頭を悩ませ、喧嘩をし、他人の世話を焼き、褒め合い、助け合って生きています。これらは考えれば当然の事なのですが、私はこのドラマを観るまで北朝鮮に住む人たちが送るごく当たり前の日常を想像出来ずにいたのです。もちろんこれが韓国で制作されたドラマだという事はわかっていますが、それでも彼女たちを通して描かれた北朝鮮という国で暮らす人々は、自分の住む世界と地続きなのだという事を改めて気付かせてくれたのです。
そんな彼女たちは当初、突如現れたセリに対し好奇心と猜疑心がないまぜになったような感情を抱きながら”村の部外者”として接し、セリとしても立場上なるべく関わりを持たないようにしていました。しかし半ば押し掛けに近いような状況でセリを気にかけ、まるで身内のように親身に振る舞うおばちゃんたちに、セリはいつしか心を開いてゆくのです。
彼女たちがいればこそ、このドラマがより鮮やかに、そして生き生きとした作品になった事は間違いないと思います。

見どころ

食べることは生きること
劇中ではセリが北朝鮮に不時着した後、幾度となく何かを食べるというシーンが登場します。しかしセリは「少食姫」と呼ばれ「どんなに美味しくても3口以上は食べない」と自ら豪語していたほどで、アルコールに関しても「ソーヴィニヨン・ブランしか飲まない」と言うようなキャラでした。にも関わらず、北朝鮮での生活ではよく食べ、よく飲む姿が描かれます。これは何も空腹だったからという訳ではありません。
“物を食べる”という事に関して、料理研究家の福田里香さんの唱えた「フード理論」というものがあります。この「フード理論」は「1:善人は美味しそうにフードを食べる」「2:正体不明者は何も食べない」「3:悪人はフードを粗末に扱う」という「三原則」を元にしています。
これに照らし合わせれば「どんなに美味しくても3口以上は食べない」と言っていた過去のセリは、いわば「食べ物を残す=粗末にする」人物だった訳です。しかし北朝鮮でのセリはまさしく「美味しそうにフードを食べる」ようになり、屈託のない幸福そうな笑顔を見せるのです。
そこで口にするものは高級食材でもなければ、手の込んだ料理でもありません。つまりここで描かれるのは物質的な豊かさではなく、精神的な豊かさです。“何を食べるか”ではなく、“どういった関係性の中で誰と食べるか”。それがこの物語において非常に重要な役割を担っており、最終盤で“ある人たち”と“ある場所”で食事をするシーンが見事にセリの人間的な成長を描いていると思うので、
私個人としてはぜひこの“食べる”というシーンに注目して頂きたいと思います。
私的名シーン3選
第3位
途切れた電話/第8話
何がどうなったシーンなのかというのはもちろん言いませんし、言えません。個人的につけたタイトルで想像してください。しかしこの時のジョンヒョクの表情、動作、凄すぎます。かの名作「セブン」でブラピ演じるミルズが犯人であるジョンドウを撃つのか撃たないのか、「あーどうしよう、撃てない、でも撃たねばならない、撃つ。いやダメだ。やっぱり撃…あー」と逡巡するシーンに匹敵するほどの名演技です。
第2位
チスの手紙/第6話
それまでお互い憎まれ口を効きあってきたセリとチスでしたが、いつの間にかそれは仲良くケンカするトムとジェリーのような関係へと変わっていくのです。ここでこんな手紙を読まれたら…ズルいぞチス!
第1位
電車の向かう先/第5話
韓国へ帰る計画のために列車で平壌で向かうセリとジョンヒョクでしたが、故障により野宿するはめに。暖をとるために焚き火を囲み、ふとしたやり取りの中でジョンヒョクは「将来の事は考えない。考えてた将来と違ったら悲しくなるから」と言います。そこでセリはこんな言葉をかけるのです。
「インドではこう言う。“間違った電車が時には目的地に運ぶ”。私もそうだった。私の人生は乗り間違いの連続。だから一度は全て投げ出したくて、どこにも行きたくなくて、飛び降りようとした。でも今の私を見て。とんでもない乗り間違いでなんと38度線を越えちゃった。」
この時点でセリの過去に何があったかは明確になっていませんが、それでも様々な背景を連想させ、だからこそ「人生なにが起こるかわからないんだから、悲観的になる事はない」というジョンヒョクへの優しさと気遣い、そして何よりここまでセリが辿ってきた道とその苦労、努力を想像して号泣なのです。

まとめ

はい、という事でかなり長くなってしまいましたが、まだまだ語りたい事は山ほどあります。私的名シーン3選も5・6・8話になっていますが、これは何も終盤がつまらない訳ではなく、ネタバレを極力回避するために物語の前半部分に絞っただけなので、大いに期待して最終話まで観て欲しいと思います。
そして当ブログがお手伝いさせて頂いているNICE73のYouTubeチャンネルにも動画がありますので、まだ未見の方はそちらもあわせて観て頂ければと思います。

さて、「愛の不時着」とはどんな物語だったのか。それは失ったものを取り戻す「再生の物語」であり、また「生(せい)」に対して希望を見出していくセリとジョンヒョクの「成長譚」でもあり、何より人種や国境を越えた「人間愛の物語」なのではないかと思います。
更にもう一つだけ付け加えるならば、このドラマは観ればほぼ間違いなく誰かと感想を語り合いたくなるドラマです。

百聞は一見にしかず。Netfulixも有料ではありますが、この作品だけ観ても1000円程度ならば全然高くありません。もちろん他にも色々観れるので、むしろお得です。

最後に、物語をより魅力的に彩ったOSTの中から特に印象深かった「10cm/우연인 듯 운명 (But it’s Destiny)」と「ペク・イェリン/다시 난, 여기 (Here I Am Again)」を締めの挨拶とさせて頂きます。

「愛の不時着」、心からお勧めです!

10cm/우연인 듯 운명 (But it’s Destiny)
ペク・イェリン/다시 난, 여기 (Here I Am Again)
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